当時、呉服屋を経営していた私にとって、展示会や外商での売り上げが主な収入源で、店での売り上げがゼロの日も珍しくありませんでした。どうにかしてこの状況を改善したいと考えていましたが、一方で長年のお得意様を失いたくないという思いもありました。

そこで、東南アジアの民芸品(当時アジアン雑貨はこの地方では見かけなかった)や若手作家のガラスや陶器を取り扱い始めました。これらのアイテムは一定の人気を集めましたが、訪れる客層は特定の方向性に限られていました。遠方からわざわざ足を運んでくださるお客様もいる一方で、近所の方々が気軽に買いに来ることはありませんでした。そこで、もっと多くの人に私たちの商品を見てもらいたいと思い、カタログ通販を検討し始めたのです。

当時はカタログ通販が全盛期で、中でもセシールの人気は突出しているように思えました。なぜセシールがこんなにも支持されるのか、他の通販カタログと比較してその違いを探っていました。

1990年代後半になると、インターネットが急速に注目を浴び始めました。市内に唯一あったインターネットカフェでマウスの使い方を教わりながら、ウチの扱い商品と同じ若手陶芸作家のホームページを見ました。その作家はガス窯で作品を焼いていましたが、薪での焼成に挑戦したいという思いを持っていました。

登窯の見積もりは高額なもので、彼は自ら窯を作ることを決意しました。図面を引いて耐火煉瓦を積み始め、初窯の失敗を経て、二度目の焼成で成功するまでの毎日々の奮闘記が日記形式で掲載されていました。

この日記を1時間以上かけて読み終えた時、作品を見る前なのに「この人の作品が欲しい」と強く感じました。それは通販カタログでは味わった事のないものでした。ホームページというものがこんなにも人の心を動かすことが出来るのか…本当の驚きでした。

cta

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